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キプロス騒動はイタリア・スペインへの予行演習  2013年03月21日号

2013/03/29

ユーロ圏は深刻な財政危機に陥っているキプロスに 100 億ユーロ貸し付ける条件として当初、
キプロス国内の銀行にある個人・法人預金口座の残高に対し、10 万ユーロ超は 9.9 %、それ以
下は 6.75 %の課税を行うと発表した。しかし預金者からの反発が強く 18 日になって 10 万ユー
ロ以下の預金の全額保護を示唆する動きがあり、19 日にはキプロス議会が銀行預金課税法案を
否決した。
ドイツなどが厳しい条件を突き付けている背景には、金融機関に対する規制が緩やかなキプロ
スが不正洗浄資金(マネーロンダリング)の温床になっている現実がある。
キプロスの銀行にはスイスと並んでロシア系マフィアやグレーな資金を預ける富裕層の顧客が
多く、預金課税は彼らの資産を直撃する。ユーロとは無関係のロシアのプーチン大統領が預金課
税に対して不満を表明した理由もそこにある。
また金融機関の側も規制が緩やかなところに目を付けて、キプロスでライセンスを受けようと
する。ユーロ圏内の国で認可されたライセンスは、他のユーロ諸国でも通用するというパスポー
トシステムが抜け穴的に利用できるからだ。キプロスでライセンスが取れるのなら、わざわざ規
制の厳しいドイツやフランスで取得する必要はないと、彼らは考える。
しかしこの騒動の本質は別の所にあると、スイスのプライベートバンカーたちは見ている。
「地中海の小さな島国であるキプロスの破たんは大きな問題ではない。それでもあえて預金課税
に踏み切ったのは、経済規模の大きいイタリアやスペインの破たんに備えた予行演習」というわ
けだ。
だからユーロ圏首脳の発言も迷走しており、課税額や課税率がころころと変わる。ボクシング
にたとえるなら、パンチを打ちながら相手(大衆)のダメージを測っているところだろう。
“本命”のスペインやイタリアは財政赤字の拡大が止まらず、2013 年の景気後退が追い打ちを
かけ税収減少は免れない。今年も財政事情は改善しないと見るのが妥当だ。
このことは他人事ではない。目先はアベノミクス効果で順調に景気回復過程にあると思われる
日本も、実は量的緩和の弊害が十分に議論されないまま財政赤字拡大へ突き進んでいる。キプロ
スの預金課税の顛末を、日本の高級官僚も興味深く見守っているはずである。